神託の言葉

分かれ道に立っていた神|猿田彦と、道はもう選ばれているという話

内乃燈

内乃燈(うちのあかり)/占い師 ウチノアカリ 50代のとき、職場のパワハラ・モラハラから鬱になり、生きる希望を無くしました。 そこから、心と脳のしくみを学び直しています。 脳科学と魂の声が交差する場所で、生きづらさを抱える方へ言葉を届けています。 神託のカードでは、当てるためではなく、 あなたが自分の声を思い出すための一枚をお渡ししています。

道に迷ったとき、私たちは「どちらへ行くべきか」を考えます。

けれど本当に困っているのは、選べないことより、選んだあと足が出ないことのほうかもしれません。

猿田彦(さるたひこ)という神様は、そこに立っています。


猿田彦とは、どんな神様か

天孫降臨の場面に現れる、導きの神です。

『日本書紀』はその姿を、はっきりと描いています。鼻の長さは七咫(ななあた)、背丈は七尺あまり。口の端は明るく光り、目は八咫鏡のように、赤いほおずきのように輝いていた。

異形といっていい姿です。のちの天狗のもとになったともいわれます。

伊勢の五十鈴川のほとりに鎮まり、猿田彦神社に祀られています。

司るものは、導き。岐路。そして、先導すること。


天八衢に立つ

瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が高天原から地上へ降りようとしたときのことです。

天と地の分かれ道――**天八衢(あめのやちまた)**に、見たこともない神が立っていました。上は高天原を照らし、下は葦原中国を照らすほどの光を放っています。

神々は恐れ、誰も近づこうとしません。

そこで天照大御神は、天宇受賣(あめのうずめ)を遣わします。「面と向かって、名を問いなさい」と。

天宇受賣が問うと、その神は答えました。

「私は国津神、猿田彦。天孫が降ると聞き、お迎えして先導しようと待っておりました。」

立ちはだかっていたのではありませんでした。待っていたのです。


道を作ったのではない

この場面で、私がいつも立ち止まるところがあります。

猿田彦は、新しい道を切り拓いたわけではありません。

天八衢は、もともとそこにありました。分かれ道は最初から存在していて、猿田彦がしたのは、どちらへ行くのかを示したことだけです。

そして先頭を歩いた。

案内された側から見れば、道が現れたように感じたでしょう。けれど実際には、道はもうそこにあったのです。


「決められない」を、脳の側から見ると

迷っているとき、実はもう傾いていることが多い

何かを選ぶとき、理由を並べる前に、すでに気持ちが傾いていることがあります。

そのあとで理由を探す。選んだ理由として自分に説明できる材料を、後から集める。人はしばしばそういう順番をたどることが知られています。

つまり、「どちらか分からない」と言いながら、内側ではもう選ばれている場合があるのです。

猿田彦が「待っていた」と答えたことに、私はこれを重ねます。道は、あなたが探しに行く前から、あなたを待っていたのかもしれません。

考え続けても、決断は良くなりません

判断や選択を繰り返すと、判断の質そのものが落ちていくことが知られています。

先送りにするほど、決めるための力は減っていく。「もう少し考えてから」は、たいてい状況を良くしません。

決断より、最初の一歩のほうが重い

そしてもうひとつ。

私たちは「決めること」を難所だと思いがちですが、実際に止まるのは決めたあとです。

心の中で決めても、行動が伴わなければ何も変わりません。そして行動は、気持ちが整うのを待っていても始まりません。小さく動くことで、気持ちのほうが後からついてくるという順番のほうが、確かなのです。

猿田彦は、指を差しただけではありませんでした。先頭を歩きました。


いま、あなたに置き換えると

道はもう選ばれています。あとは足を出すだけです。

いくつもの選択肢を前にして動けないとき、材料が足りないのではないかもしれません。すでに答えを知っていて、認めるのが怖いだけということもあります。

心が傾いているほうを、正直に見てください。

そして、恐ろしく見えるものが、実は待っていてくれることがあります。

神々でさえ、猿田彦の姿に怯えて近づけませんでした。けれど名を問うてみたら、迎えに来た神でした。

問う前に、決めつけないでください。


この神様が現れたとき

神託引きで猿田彦が出たなら、それは岐路に立っているという報せです。

そして、そこにはもう導き手がいます。あなたが気づいていないだけかもしれません。

一歩を出せば、道のほうが応えます。


猿田彦とゆかりの深い場所

  • 猿田彦神社/三重県伊勢市 ― 猿田彦の子孫が代々奉仕してきたと伝わる、みちひらきの社
  • 椿大神社/三重県鈴鹿市 ― 猿田彦を主祭神とし、猿田彦大本宮とも称されます
  • 二見興玉神社/三重県伊勢市 ― 夫婦岩で知られ、猿田彦をお祀りします

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