神託の言葉

稲穂を持って降りた神|瓊瓊杵尊と、受け取ったものを地に降ろす話

内乃燈

内乃燈(うちのあかり)/占い師 ウチノアカリ 50代のとき、職場のパワハラ・モラハラから鬱になり、生きる希望を無くしました。 そこから、心と脳のしくみを学び直しています。 脳科学と魂の声が交差する場所で、生きづらさを抱える方へ言葉を届けています。 神託のカードでは、当てるためではなく、 あなたが自分の声を思い出すための一枚をお渡ししています。

もらったまま、使えずにいるものはありませんか。

高価な道具。誰かがくれた言葉。学んだ知識。よい機会。

受け取ることと、使うことのあいだには、思いのほか高い壁があります。


瓊瓊杵尊とは、どんな神様か

瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)。天照大御神の孫にあたります。

名の「ニニギ」は、稲がにぎにぎしく実るさまを表すとされます。名前そのものが、実りです。

天孫降臨の主人公であり、初代・神武天皇の曽祖父にあたる神様です。

司るものは、降臨。実り。そして、継承。


本来は、父が降りるはずだった

意外と知られていないことがあります。

最初に地上へ降りるよう命じられたのは、瓊瓊杵尊ではありません。

父の天忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)でした。ところが、支度をしているあいだに子が生まれます。それが瓊瓊杵尊です。

天忍穂耳命は申し出ました。**「この子を降ろすのがよいでしょう」**と。

こうして、生まれたばかりの孫が地上へ向かうことになりました。

自分で望んだ役目ではなかったのです。


三種の神器と、稲穂

天照大御神は、瓊瓊杵尊に八咫鏡・草薙剣・八尺瓊勾玉を授けます。三種の神器です。

そして鏡について、こう言い添えました。

「この鏡を、私の御魂として、私を拝むように敬い祀りなさい。」

さらに、高天原の斎庭(ゆにわ)の稲穂も託されます。天上で育てていた稲を、地上に降ろすためです。

思金神、天宇受賣、天之手力男らが供につき、猿田彦が道を先導しました。

一行は、日向の高千穂峰に降り立ちます。


降りたあとに、何をしたか

降り立った瓊瓊杵尊は、まず宮を建てました。

そして笠沙の岬で木花之佐久夜比売に出会い、結ばれます。ただし姉の石長比売を送り返したため、その子孫である人の命には限りができたと語られます。

戦いも、征服もありません。

**建てて、結ばれて、実らせた。**それがこの神様のしたことです。

託された稲は、地上に根づきました。


「受け取ったものを使う」を、脳の側から見ると

使わないほうが、安全に感じられます

もらったものを使えずにいるとき、私たちはよく「もったいないから」と言います。

けれど本当のところは、少し違うかもしれません。

**使えば、減ります。**そして、うまく使えなかったときに、そのことが分かってしまいます。

持っているだけなら、可能性のまま残せます。使った瞬間に、それは結果になる。

失うことの痛みは、得ることの喜びより強く感じられることが知られています。使わないという選択は、その痛みを先送りにする合理的な振る舞いでもあるのです。

自分で選んでいない役目でも、動けます

瓊瓊杵尊は、自分から志願したわけではありませんでした。

「やりたいと思ってから始める」のが理想に見えます。けれど実際には、先に役目があり、動いているうちに自分のものになっていくという順番のほうが多いのではないでしょうか。

行動が気持ちに先立つことは、心理療法の分野でも知られています。やる気を待つより、小さく動くほうが確実です。

生まれたばかりで降ろされた神が、国の礎を築いた。その順番に、私は励まされます。

託されたものは、開けて使わないと意味がありません

鏡は、祀るよう命じられました。稲は、蒔くよう託されました。

どちらも「持っていなさい」ではなく、「使いなさい」という指示です。

いま手元にあるもの――誰かからもらった言葉、学んだこと、与えられた機会。それは保管するために来たのでしょうか。


いま、あなたに置き換えると

受け取ったものを、惜しまず地に降ろしてください。

天上に置いたままの稲は、いつまでも稲のままです。地に蒔いて、はじめて増えます。

**うまくできなくても構いません。**瓊瓊杵尊も、姉を送り返すという取り返しのつかない選択をしています。完璧ではありませんでした。

それでも、稲は根づいたのです。

そして、望んで始めたことでなくても構いません。

いま担っている役目が、自分で選んだものでないとしても。動いているうちに、自分のものになっていくことがあります。


この神様が現れたとき

神託引きで瓊瓊杵尊が出たなら、それは始める準備がすでに整っているという報せです。

足りないものを探す時期ではありません。もう持っているはずです。

あとは、降ろすだけです。


瓊瓊杵尊とゆかりの深い場所

  • 霧島神宮/鹿児島県霧島市 ― 天孫降臨の地・高千穂峰のふもとに鎮まります
  • 高千穂神社/宮崎県高千穂町 ― 瓊瓊杵尊をはじめ、日向三代の神々を祀ります
  • 新田神社/鹿児島県薩摩川内市 ― 瓊瓊杵尊の御陵と伝わる可愛山陵があります

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