見えているものが、原因とは限りません。
問題が起きているとき、私たちはたいてい目の前の波に対処します。
けれど波は、結果です。
大綿津見とは、どんな神様か
大綿津見神(おおわたつみのかみ)。伊邪那岐と伊邪那美の子で、大海を統べる神です。
娘に豊玉毘売と玉依毘売がいます。つまり、初代天皇の外祖父にあたります。
「ワタツミ」の「ワタ」は海、「ツミ」は霊威を持つものを指すとされます。海そのものの神格です。
志賀海神社(福岡市)の御祭神。全国の綿津見神社・海神社に祀られています。
司るものは、海。潮目。そして、根本。
宮に、迎え入れた
山幸彦こと火遠理命が、兄の釣り針を探して海へ潜ったときのこと。
塩椎神に教えられた通り、宮の門のそばの桂の木に登って待っていると、水を汲みに来た侍女が井戸に映る影に気づきました。
知らせを受けた大綿津見は、こう言います。
「これは天つ神の御子である。」
一目で見抜き、すぐさま八重の敷物を重ねて迎え入れ、盛大にもてなしました。そして娘の豊玉毘売と結ばせます。
問い詰めもせず、疑いもせず、まず迎えた。
三年後、ようやく理由を聞いた
火遠理命は、そのまま三年を過ごします。
ある日、大きくため息をつきました。それを聞いた豊玉毘売が父に伝え、大綿津見はようやく尋ねます。
「なぜ、ため息をついておられるのか。」
ここで初めて、火遠理命は事情を話しました。兄の釣り針を失くしたこと、それを返せと責められていること。
三年、聞かなかったのです。
話したくなるまで、待っていたとも読めます。
海の魚を、全部集めた
理由を聞いた大綿津見は、すぐに動きます。
大小すべての魚を呼び集め、釣り針を見た者はいないかと問いました。
すると魚たちが答えます。「近ごろ、赤鯛が喉に何か刺さって物を食べられないと嘆いております。」
赤鯛の喉を調べると、そこに針がありました。
海のすべてを一度に呼ぶ。それができるのは、海そのものである神だけです。
探し方が、根本からでした。
波ではなく、流れを見る
この神様の性格は、この一場面によく表れています。
火遠理命は、針を落とした場所を探していたはずです。落ちた場所を探すのは、自然な発想です。
けれど大綿津見は、そこを探しませんでした。
**「誰が持っているか」**を、海全体に聞いたのです。
落ちた針は、沈んだままとは限りません。魚が飲み込むかもしれない。潮に流されるかもしれない。海は動いているのだから、探すべきは場所ではなく流れのほう。
「根本を見る」を、脳の側から見ると
目に見える原因に、飛びつきやすくできています
何かが起きたとき、私たちは思いつきやすい説明を採用しがちです。
最近見たこと、印象の強いこと、目の前にあること。それらが原因に見えます。
けれど本当の原因は、たいてい目立ちません。目立たないから、長く続いてきたのです。
症状を潰すと、形を変えて戻ります
対処が症状に向かうと、そのときは収まっても、また別の形で出てきます。
眠れないから薬を飲む。けれど眠れない理由が変わっていなければ、また眠れなくなります。
「なぜ」を数回重ねると、景色が変わることがあります。表面の一つ下、その下。
大綿津見は、針を探さずに針を持っている者を探しました。一段深い問いです。
気まぐれに見えるものにも、条件があります
海は表情を変えます。凪いだかと思えば荒れる。気まぐれに見えます。
けれど海が荒れるのは、風や気圧や地形という条件があるからです。理由が見えないだけで、無いわけではありません。
人の機嫌も、体調も、うまくいかない日も、同じかもしれません。
いま、あなたに置き換えると
表に出た波ではなく、その下の流れを見てください。
いま起きている問題が繰り返しているなら、それはまだ原因に触れていないということかもしれません。
同じ対処を続けても、同じところに戻ります。
そして、原因は自分の中とは限りません。
環境、体調、人間関係、季節。あなたの努力が足りないのではなく、条件が違うだけということは、よくあります。
海が荒れるのは、海のせいではありません。
この神様が現れたとき
神託引きで大綿津見が出たなら、それは一段深く見るときという報せです。
急いで手を打つ前に、なぜそれが起きているのかを確かめてください。
すでに問題が起きているなら、目に見えているものとは別に、原因があると考えてよいでしょう。
大綿津見とゆかりの深い場所
- 志賀海神社/福岡市東区 ― 全国の綿津見神社の総本社。海神の宮の伝承地とされます
- 和多都美神社/長崎県対馬市 ― 海中に鳥居が立ち、龍宮伝説が残ります
- 穂高神社/長野県安曇野市 ― 海神の子孫・安曇氏が信州の地に祀りました
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