因幡の白兎の話は、多くの方がご存じだと思います。
けれどその兎が、誰のために予言したのかは、あまり語られません。
八上比売(やかみひめ)。この物語の、もうひとりの主人公です。
八上比売とは、どんな神様か
因幡国の八上(現在の鳥取市河原町あたり)に住んでいたとされる姫です。
その美しさは、遠く出雲まで聞こえていました。
大国主が、まだ大穴牟遅と呼ばれていた頃の物語に登場します。
司るものは、選ぶこと。清らかさ。そして、退くこと。
八十神が、押しかけた
出雲の八十神(やそがみ)――大勢の兄弟たちが、こぞって八上比売に求婚しようと因幡へ向かいました。
末弟の大穴牟遅は、荷物持ちとして最後尾を歩かされます。
途中、気多の岬で、皮を剥がれて泣いている兎に出会いました。
八十神は面白半分に「海の塩水で洗い、風に当たれ」と教えます。兎はその通りにして、いっそうひどい状態になりました。
遅れて来た大穴牟遅が、真水で洗い、蒲の花粉の上に転がるよう教えます。兎の傷は癒えました。
そして兎は告げます。「八上比売は、あなたを選ぶでしょう。」
全員を、断った
因幡に着いた八十神は、次々に求婚します。
八上比売の答えは、こうでした。
「あなたがたの言うことは聞きません。大穴牟遅命に嫁ぎます。」
全員に、はっきり断りを告げたのです。
身分でも、順番でも、勢いでもなく。荷物を持たされて歩いていた末弟を選びました。
兎への振る舞いを、この姫は知っていたのでしょう。
この選択が、八十神の怒りを招き、大穴牟遅は二度殺されることになります。
そして、自分から帰った
長い年月が過ぎ、大穴牟遅は大国主となって出雲を治めていました。
八上比売は、約束通り出雲へ来ます。
けれど――正妻の須勢理毘売を、畏れました。
生まれた子を木の俣に挟んで置き、因幡へ帰っていきます。
その子は**木俣神(きまたのかみ)**と呼ばれました。
『古事記』は、それ以上を書きません。
二度、自分で決めた
この姫の物語を読み返すと、あることに気づきます。
八上比売は、二度とも自分で決めています。
八十神を断ったのも、自分。出雲を去ったのも、自分。
誰かに追い出されたのでも、争いに負けたのでもありません。畏れて、自分で帰ったと書かれています。
一度目は「選ぶ」決断。二度目は「退く」決断。
どちらも、同じ人がしたことです。
「退く」を、脳の側から見ると
選ぶことと、退くことは同じ働きです
「決断力がある人」と言うとき、私たちはたいてい選ぶほうを思い浮かべます。
けれど、やめる・引く・手放すことにも、同じだけの判断が要ります。
そして多くの場合、**退くほうが難しい。**すでに費やしたものが天秤に乗るからです。
八上比売は、遠い出雲まで来ていました。そこまでの道のりを捨てて帰るのは、簡単ではなかったはずです。
消耗する場所に居続けなくていい
人が消耗するかどうかには、その場でどれだけ緊張し続けるかが関わります。
強い緊張が続く環境に長くいると、心身に影響が出ます。その場を離れることは、正当な対処です。
「逃げた」と言われることがあるかもしれません。けれど、離れたほうがいい場所は、実際にあります。
決めた事実は、残ります
そしてもうひとつ。
八上比売は、**子を置いていきました。**すべてを断ち切ったわけではありません。
木俣神として、その子は残りました。繋がりは残したまま、自分は退いた。
全部か無かではなく、どこまで残してどこから引くかを決めることもできます。
いま、あなたに置き換えると
自分で選び、自分で退く。どちらも誇っていいのです。
いま、続けるか離れるかで迷っていることがあるなら。
**離れることも、あなたの決断です。**負けでも、逃げでもありません。
そして、選んだ過去を否定しなくていいのです。
八上比売が大穴牟遅を選んだことは、間違いではありませんでした。あの選択があったから、兎の予言は当たり、大国主は生まれました。
選んだことと、退いたことは、両立します。
この神様が現れたとき
神託引きで八上比売が出たなら、それは自分で決めていいときという報せです。
まわりが何と言おうと、あなたが選ぶことです。
そして、いつ引くかも、あなたが決めることです。
八上比売とゆかりの深い場所
- 白兎神社/鳥取県鳥取市 ― 因幡の白兎の舞台。兎を祀り、縁結びで知られます
- 賣沼神社/鳥取県鳥取市河原町 ― 八上比売を主祭神とします
- 出雲大社/島根県出雲市 ― 大国主を祀り、木俣神も境内に祀られています
あなたと結びつきの強い神様を調べてみませんか
38柱の神々から、いまのあなたに必要な一枚を引く無料のオラクル「神託引き」をご用意しています。生年月日から、あなたと結びつきの強い神様を導き出すこともできます。
三十八柱すべての紹介は、こちらにまとめました。
もう少し深く読み解きたい方へ
神託引きが伝えるのは「どの神様があなたのそばにいるか」までです。
その神様が、いまあなたが立っている転機に対して何を告げているのか。そこから先は、お一人おひとりの状況を伺わなければ読めません。
鑑定では、ご相談の内容と誕生日をもとに、あなただけの鑑定書(PDF)と鑑定動画をお作りしています。当てるための占いではなく、納得のいく選択のための道しるべとして。