神託の言葉

従わなかった星|天津甕星と、馴染めないということ

内乃燈

内乃燈(うちのあかり)/占い師 ウチノアカリ 50代のとき、職場のパワハラ・モラハラから鬱になり、生きる希望を無くしました。 そこから、心と脳のしくみを学び直しています。 脳科学と魂の声が交差する場所で、生きづらさを抱える方へ言葉を届けています。 神託のカードでは、当てるためではなく、 あなたが自分の声を思い出すための一枚をお渡ししています。

日本神話の神々は、たいてい最後には従います。

須佐之男命も追放されたあと英雄になり、大国主も国を譲り、建御名方も誓いを立てました。

ただひとり、最後まで従わなかった神がいます。


天津甕星とは、どんな神様か

天津甕星(あまつみかぼし)。**天香香背男(あめのかがせお)**とも呼ばれます。

「カガ」は輝くこと、「セ」は背、「オ」は男。輝く男という意味だとされます。

日本神話でほとんど唯一の、星の神です。太陽と月の神はいるのに、星の神はこの一柱しかいません。

そして、まつろわぬ神――最後まで天つ神に従わなかった神として記されています。

司るものは、異端。孤高。そして、反骨。


名前が出るのは、一度だけ

『日本書紀』の国譲りの場面に、こうあります。

天つ神たちが葦原中国を平定しようとしたとき、経津主と武甕槌が降ろされます。

二柱はほとんどの神を服従させました。

「ただ、星の神・香香背男だけが従わなかった。」

そこで、**建葉槌命(たけはづちのみこと)**が遣わされ、ようやく服したと記されます。

登場は、これだけです。

台詞もなければ、姿の描写もない。何をしたのかも、なぜ従わなかったのかも書かれていません。

ただ「従わなかった」という事実だけが残っています。


悪神とされてきた

天津甕星は、長く悪神として扱われてきました。

天つ神に逆らった者だから、というのが理由です。

けれど、記述をよく読むと悪事を働いた記録はありません。

侵略していない。誰かを傷つけていない。ただ、従わなかった。

それだけで悪神とされるというのは、考えさせられるところです。


なぜ星なのか

もうひとつ、興味深い点があります。

太陽は天照大御神。月は月読命。どちらも重要な神です。

**それなのに、星の神はほぼこの一柱だけ。**しかも、まつろわぬ神として。

古代の日本は、農耕を軸にした社会でした。**太陽と月は、暦と直結します。**田を作る人にとって、日と月は必要な神でした。

星は、そうではありませんでした。航海や占星には要りますが、稲作の中心にはいない。

中心の秩序に組み込まれなかったから、従わない神として描かれたのかもしれません。


「馴染めない」を、脳の側から見ると

集団は、外れた個体に敏感です

人は集団で生きてきた生き物です。集団から外れることは、かつては生存の危機に直結しました。

そのため、周囲と違うことに対する感受性が高くできています。

自分が浮いていると感じるとつらいのは、心が弱いからではありません。そう感じるように作られているからです。

同調は、思っているより強く働きます

そして、周囲に合わせる力は、自分で思うよりずっと強く働きます。

明らかにおかしいと分かっていても、周囲が揃っていると、判断が引きずられる。これは繰り返し確かめられています。

つまり「みんなが言っているから正しい」は、しばしば正しくありません。

天津甕星が従わなかったことは、引きずられなかったということでもあります。

多様であることには、意味があります

集団の中に、違う考え方をする者がいることには機能があります。

全員が同じ方向を向いている集団は、うまくいっているときは強いのですが、方向が間違っていたときに止まれません。

異論を唱える者がいることで、集団は誤りに気づけます。

馴染まない存在は、集団にとって必要な部分でもあります。


いま、あなたに置き換えると

馴染めないことは、欠点ではありません。

まわりと同じようにできない。空気が読めないと言われる。話が合わない。

つらいことです。それは本当につらい。

けれど――あなたが従わなかったことには、理由があるかもしれません。

そして、悪者にされることがあります。

何も悪いことをしていなくても、従わないというだけでそう扱われることが、実際にあります。

天津甕星は、そうでした。それでも名前が残っています。消されなかった。


この神様が現れたとき

神託引きで天津甕星が出たなら、それは合わせなくていいという報せです。

いま無理に馴染もうとしているなら、その努力は要らないかもしれません。

星は、太陽の暦には入りません。それでも、ずっとそこで光っています。


天津甕星とゆかりの深い場所

  • 大甕神社/茨城県日立市 ― 天津甕星を封じたと伝わる宿魂石があり、建葉槌命を祀ります
  • 星宮神社/各地 ― 星の神を祀る社が、関東を中心に点在します
  • 明星山/各地 ― 星信仰の名残を伝える地名が残ります

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