日本神話の神々は、たいてい最後には従います。
須佐之男命も追放されたあと英雄になり、大国主も国を譲り、建御名方も誓いを立てました。
ただひとり、最後まで従わなかった神がいます。
天津甕星とは、どんな神様か
天津甕星(あまつみかぼし)。**天香香背男(あめのかがせお)**とも呼ばれます。
「カガ」は輝くこと、「セ」は背、「オ」は男。輝く男という意味だとされます。
日本神話でほとんど唯一の、星の神です。太陽と月の神はいるのに、星の神はこの一柱しかいません。
そして、まつろわぬ神――最後まで天つ神に従わなかった神として記されています。
司るものは、異端。孤高。そして、反骨。
名前が出るのは、一度だけ
『日本書紀』の国譲りの場面に、こうあります。
天つ神たちが葦原中国を平定しようとしたとき、経津主と武甕槌が降ろされます。
二柱はほとんどの神を服従させました。
「ただ、星の神・香香背男だけが従わなかった。」
そこで、**建葉槌命(たけはづちのみこと)**が遣わされ、ようやく服したと記されます。
登場は、これだけです。
台詞もなければ、姿の描写もない。何をしたのかも、なぜ従わなかったのかも書かれていません。
ただ「従わなかった」という事実だけが残っています。
悪神とされてきた
天津甕星は、長く悪神として扱われてきました。
天つ神に逆らった者だから、というのが理由です。
けれど、記述をよく読むと悪事を働いた記録はありません。
侵略していない。誰かを傷つけていない。ただ、従わなかった。
それだけで悪神とされるというのは、考えさせられるところです。
なぜ星なのか
もうひとつ、興味深い点があります。
太陽は天照大御神。月は月読命。どちらも重要な神です。
**それなのに、星の神はほぼこの一柱だけ。**しかも、まつろわぬ神として。
古代の日本は、農耕を軸にした社会でした。**太陽と月は、暦と直結します。**田を作る人にとって、日と月は必要な神でした。
星は、そうではありませんでした。航海や占星には要りますが、稲作の中心にはいない。
中心の秩序に組み込まれなかったから、従わない神として描かれたのかもしれません。
「馴染めない」を、脳の側から見ると
集団は、外れた個体に敏感です
人は集団で生きてきた生き物です。集団から外れることは、かつては生存の危機に直結しました。
そのため、周囲と違うことに対する感受性が高くできています。
自分が浮いていると感じるとつらいのは、心が弱いからではありません。そう感じるように作られているからです。
同調は、思っているより強く働きます
そして、周囲に合わせる力は、自分で思うよりずっと強く働きます。
明らかにおかしいと分かっていても、周囲が揃っていると、判断が引きずられる。これは繰り返し確かめられています。
つまり「みんなが言っているから正しい」は、しばしば正しくありません。
天津甕星が従わなかったことは、引きずられなかったということでもあります。
多様であることには、意味があります
集団の中に、違う考え方をする者がいることには機能があります。
全員が同じ方向を向いている集団は、うまくいっているときは強いのですが、方向が間違っていたときに止まれません。
異論を唱える者がいることで、集団は誤りに気づけます。
馴染まない存在は、集団にとって必要な部分でもあります。
いま、あなたに置き換えると
馴染めないことは、欠点ではありません。
まわりと同じようにできない。空気が読めないと言われる。話が合わない。
つらいことです。それは本当につらい。
けれど――あなたが従わなかったことには、理由があるかもしれません。
そして、悪者にされることがあります。
何も悪いことをしていなくても、従わないというだけでそう扱われることが、実際にあります。
天津甕星は、そうでした。それでも名前が残っています。消されなかった。
この神様が現れたとき
神託引きで天津甕星が出たなら、それは合わせなくていいという報せです。
いま無理に馴染もうとしているなら、その努力は要らないかもしれません。
星は、太陽の暦には入りません。それでも、ずっとそこで光っています。
天津甕星とゆかりの深い場所
- 大甕神社/茨城県日立市 ― 天津甕星を封じたと伝わる宿魂石があり、建葉槌命を祀ります
- 星宮神社/各地 ― 星の神を祀る社が、関東を中心に点在します
- 明星山/各地 ― 星信仰の名残を伝える地名が残ります
あなたと結びつきの強い神様を調べてみませんか
38柱の神々から、いまのあなたに必要な一枚を引く無料のオラクル「神託引き」をご用意しています。生年月日から、あなたと結びつきの強い神様を導き出すこともできます。
三十八柱すべての紹介は、こちらにまとめました。
もう少し深く読み解きたい方へ
神託引きが伝えるのは「どの神様があなたのそばにいるか」までです。
その神様が、いまあなたが立っている転機に対して何を告げているのか。そこから先は、お一人おひとりの状況を伺わなければ読めません。
鑑定では、ご相談の内容と誕生日をもとに、あなただけの鑑定書(PDF)と鑑定動画をお作りしています。当てるための占いではなく、納得のいく選択のための道しるべとして。