日本の神は、完成していません。

だから、あなたのそばにいられます。

隠れたくなる日。怒りが収まらない日。選ばれなかった日。
古事記の三十八柱が、そのひとつずつに対応しています。

魂の処方箋

「あなたのため」という言葉が苦しい理由 ― ヒルコの神話と、心が痛むしくみ

内乃燈

内乃燈(うちのあかり)/占い師 ウチノアカリ 50代のとき、職場のパワハラ・モラハラから鬱になり、生きる希望を無くしました。 そこから、心と脳のしくみを学び直しています。 脳科学と魂の声が交差する場所で、生きづらさを抱える方へ言葉を届けています。 神託のカードでは、当てるためではなく、 あなたが自分の声を思い出すための一枚をお渡ししています。

「あなたのためを思って言っているのよ」

この言葉を、何度聞いてきたでしょうか。

言われるたびに、胸が締め付けられたように苦しくなる。
言われ続けると、悪いことが起きた時、
全部お前のせいだと言われている気がしてくる。

押し付ける愛は、本当の愛ではないのかもしれません。
それは、ことが起きた時の責任を転嫁するための
保険のようにも見えてきます。

今回は、この苦しさを
日本最古の神話のひとつと、心と脳のしくみから
ゆっくり見つめてみたいと思います。

■ 流された最初の御子、ヒルコ

『古事記』によると、
イザナギとイザナミは天の御柱をめぐって結ばれ、
最初の御子を授かりました。

それがヒルコ(水蛭子)です。

けれどヒルコは、うまく育たない子だったとされ、
葦の舟に入れて流されてしまいます。

その後、二柱の神は天の神々に相談し、
太占(ふとまに)という占いで原因を確かめました。

答えは「女神のほうが先に声をかけたから、よくなかった」。

ここに、この神話の大切なところがあります。

うまくいかなかった理由は、
儀式のやり方の問題だとされたのです。
ヒルコ自身には、何の落ち度もありませんでした。

それなのに、結果の重さを背負ったのは
いちばん小さく、声を持たないヒルコでした。

さらに言えば、その「理由」でさえ
女神ひとりに向けられています。

責任が、上から下へ、
強い者から弱い者へと押し流されていく。

「あなたのため」という言葉に苦しさを感じる方は、
この流れの、いちばん下に置かれてきた方なのかもしれません。

■「胸が締め付けられる」のは、気のせいではありません

「あなたのため」と言われて胸が苦しくなる。
これは、ただの気分の問題ではないようです。

2003年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の
ナオミ・アイゼンバーガー博士らは、
科学誌『サイエンス』に興味深い研究を発表しました。

仲間はずれにされたときの脳の働きを調べたところ、
体の痛みを感じるときに関わる
「背側前帯状皮質(はいそくぜんたいじょうひしつ)」という部分が
活発に働いていたのです。

心の痛みと体の痛みは、
脳の中で重なり合うところがある。

つまり、「胸が締め付けられる」という感覚は、
あなたの心がほんとうに痛みを感じているサインなのです。

どうか、「これくらいで苦しくなるなんて」と
ご自分を責めないでくださいね。

■ 愛の形をした「コントロール」

心理学には「心理的コントロール」という考え方があります。

アメリカの心理学者ブライアン・バーバー博士が
1990年代に整理した概念で、
罪悪感を抱かせたり、愛情を引っ込めたりすることで
相手の気持ちや考えを動かそうとする関わり方を指します。

「こんなにあなたのことを考えているのに」
「あなたのために言っているのに」

こうした言葉は、ときに
相手に罪悪感を植えつけ、従わせる働きを持ってしまいます。

研究では、こうした関わりを受け続けた子どもは、
不安や落ち込みを抱えやすくなる傾向があると報告されています。

ここで大切なのは、
言っている側に悪意があるとは限らない、ということです。

その方もまた、同じように育てられ、
同じ言葉を浴びてきたのかもしれません。

けれど、悪意がないことと、
あなたが苦しくないことは、別のお話です。

あなたの苦しさは、あなたの苦しさとして
大切に扱ってよいのだと思います。

■ 流された先で、福の神になる

ヒルコの物語には、続きがあります。

流されたヒルコは、やがて浜辺にたどり着き、
人々に拾われ、大切に祀られるようになったと伝えられています。

兵庫県の西宮神社では、
ヒルコは「えびす大神」としてお祀りされています。

七福神のなかで、唯一日本生まれの神様といわれるえびす様。
いつもにこやかに鯛を抱え、
人々に福を運ぶ神様です。

捨てられた御子が、
人を笑顔にする神様になった。

古代の人々は、この物語の中に
「流されたものは、終わりではない」という祈りを
込めていたのかもしれません。

■ 舟から、重さを降ろすということ

脳には「神経可塑性」という性質があります。

何歳になっても、新しい経験や考え方によって
脳のつながりは少しずつ変わっていく、というものです。

長いあいだ「全部わたしのせい」と感じてきた心の回路も、
新しい言葉を繰り返し自分にかけることで
ゆっくりと形を変えていくと考えられています。

たとえば、こんな言葉です。

「それは、わたしが背負う重さではなかった」
「わたしは、わたしのために選んでいい」

最初は、しっくりこなくても大丈夫です。
抵抗が起きるということは、
そこに大切な何かがある、というサインなのかもしれません。

ヒルコの舟が浜にたどり着いたように、
あなたの舟も、きっといつか穏やかな場所へたどり着きます。

そのとき、あなたは
誰かの「あなたのため」ではなく、
自分の声で生きる神様になっているのだと思います。

■ おわりに

押し付けられた愛に、苦しんできたあなたへ。

その苦しさは、あなたが弱いからではありません。
背負わなくていい重さを、
ずっと抱えてきた証なのだと思います。

今日は、ほんの少しだけ
その重さを舟から降ろしてみてくださいね。

あなたの魂が、本来の輝きを取り戻せますように。

内乃燈 | 魂の処方箋

【参考】
・『古事記』上巻(イザナギ・イザナミの国生み)
・Eisenberger, N. I., Lieberman, M. D., & Williams, K. D. (2003). Does rejection hurt? An fMRI study of social exclusion. Science, 302, 290–292.
・Barber, B. K. (1996). Parental psychological control: Revisiting a neglected construct. Child Development, 67(6), 3296–3319.
・西宮神社(えびす宮総本社)由緒

スポンサーリンク

一枚引いた言葉に、あなたの心はどう動くでしょうか。
その反応が、あなたの声です。

当てるためのカードではありません。
あなたの内側にすでにある声を、思い出すための一枚です。

神託カード ― 一枚引く、静かな時間 ―

内乃燈|魂の処方箋
脳科学と魂の声が交差する場所で、あなたに言葉を届けます。
内乃燈について

人生を変えるおすすめの商品